Loading...

公益社団法人 日本学校歯科医会

公益社団法人 日本学校歯科医会

日本学校歯科医会の声明・見解等

情報

学校での歯・口腔の健康診断における探針使用について

日本学校歯科医会は、平成14年3月28日付で加盟団体に対して「次年(平成15年)度からの初期う蝕及び要観察歯(CO)検出の基準を変更する旨」の通知をしたところ、学校での歯・口腔の健康診断(以下、学校歯科健康診断)に探針を使用することについて認識の隔たりが生じ、現在学校現場で混乱が起きています。

その為、日本学校歯科医会では、円滑な学校歯科健康診断を実施するために、会員並びに学校保健関係者及び保護者に対し、「学校歯科健康診断時に探針を使用すること」についての基本的な考え方を、このページを使ってご説明したいと思います。

まず、日本学校歯科医会では、初期う蝕及び要観察歯(CO)検出は、主に視診で行うように指導しています。

しかしながら、時として学校歯科健康診断時に探針を使用する場合は、例えば歯面及びう窩或いは軟化した実質欠損等に付着しているプラーク或いは食渣を取り除く時や、裂溝のシーラントやレジン充填等の填塞物や充填物の有無を確認する時は必要と考えます。探針は学校歯科健康診断の補助的器具として使用し、この時使用する探針の刃先は鋭利なものでなく、また探針は歯面に対して水平的に動かし(図1)、垂直的な圧力を加えて歯面を傷つけることがないように(図2)、細心の注意を払って学校歯科健康診断を行うよう指導しています。

現在、理想的な初期う蝕及び要観察歯(CO)検出については、充分満足できるう蝕診断法は確立されていません。しかしながら、日本学校歯科医会発行の「学校歯科医の活動指針」等に準拠するこの方法によって学校歯科健康診断を実施すれば、児童生徒の大切な歯牙を探針によって破壊することはありえず、この方法が、安全な「学校での歯・口腔の健康診断法」であると考えています。

日本学校歯科医会が推進する児童生徒の歯・口腔機能の健全育成の構築が、児童生徒の基本的生活習慣を育み、このことが生涯を通じたQ・O・Lを高めることに繋がります。
今後とも、日本学校歯科医会に対し、さらなるご理解とご支援・ご助力を賜りますよう宜しくお願い致します。

健康診断票(歯・口腔)について

本会発行の「歯・口腔の健康診断と事後措置の留意点-CO・GOを中心に-」に掲載の健康診断票(歯・口腔)では、国が示した様式例を元にして、日本学校歯科医会が一部変更して使いやすいと思われる様式例を示しています。平成7年の学校保健法施行規則の一部改正により、健康診断票が様式例となったのを受けて、各自治体でも国が示す例とは若干異なる様式を定めている場合もありますので、様式の設定(改定)にあたっては、各自治体と調整しながらお進めください。

また、健康診断票(様式)は、児童生徒等が転校等により新しい地でも継続した事後措置や保健指導を受ける必要があることから、普遍性が求められます。従って自治体から様式改変の意見を求められた際でも国が示す様式例の項目は必ず押さえ、また、極端な改変をしないようにお願いいたします。

う歯(C)及び要観察歯(CO)の検出基準の改正について

当会では、平成14年2月20日の理事会において「う歯(C)及び(CO)の検出基準」の改正を議決し、同年3月28日付にて加盟団体へ連絡の上、平成15年度の健康診断より実施願いたい旨を会員の皆様への周知を図りましたが、今一度、周知徹底のためお知らせいたします。
なお、既刊の「学校歯科医の活動指針」、「歯・口腔の健康診断パネル」等には、旧基準で記載がなされておりますので、下記のように読み替えて下さるようお願いいたします。


う歯(C)及び要観察歯(CO)の検出基準(改正後)
1. う歯(C)の検出基準
う歯(C):
  • 咬合面または頬面、舌面の小窩裂溝において、視診にて歯質にう蝕性病変と思われる実質欠損(う窩)が認められるもの。
  • 隣接面では、明らかな実質欠損(う窩)を認めた場合にう蝕とする。
  • 平滑面においては、白斑、褐色斑、変色着色などの所見があっても、歯質に実質欠損が認められない場合にはう蝕とはしない。

なお、診査の時点で明らかにう蝕と判定できない場合には、次に示す要観察歯とする。

2.要観察歯(CO)の検出基準
要観察(CO):

主として視診にてう窩は認められないが、う蝕の初期症状(病変)を疑わしめる所見を有するもの。
このような歯は経過観察を要するものとして、要観察歯(Questionable Caries under Observation)とし、略記号のCO(シーオー)を用いる。
具体的には、次のものが該当する。

  • 小窩裂溝において、エナメル質の実質欠損が認められないが、褐色窩溝等が認められるもの。
  • 平滑面において、脱灰を疑わしめる白濁や褐色斑等が認められるが、エナメル質の実質欠損(う窩)の確認が明らかでないもの。
  • 精密検査を要するう蝕様病変のあるもの(特に隣接面)。

歯・口腔の健康診断の際の消毒と滅菌

近年B型肝炎が注目されているが、わが国の慢性B型肝炎の患者は40万人と推定されている。更にHBV(HBs抗原持続陽性者)キャリアが200~400万人存在するといわれ、これは欧米に比べて10~20倍も多い。この現状の中、歯科保健に限らないが、学校保健の検診に際しては感染予防に十分な配慮が必要である。
 更に、AIDSは1981年に米国で初めて報告されて以来その患者の数も増加しており、HIVの感染力はB型肝炎ウイルスに比べると弱いといわれてはいるが、これらの感染から児童生徒を守るためには検診に際しての消毒・滅菌の徹底が不可欠であり、この問題は一段と厳しく考えなければならないのが現状である。学校における感染予防・防止対策は大きく2点に絞られる。

 1)管理対策:日常生活や学内生活で、または検診等による感染予防方策をとること。
 2)教育対策:感染に関する正しい知識を身につけるために基礎知識の普及に当たること。

 本項の1)について、特に学校歯科医の検診時の留意点に関して述べることとする。
 顎関節の検査で側頭部を手指で触れる触診に際しては、被検者毎に手指消毒を行うことは時間的に無理である。健康な皮膚の場合はよいが、局部に傷、ニキビなどがあって触れた場合は手指の消毒をする方がよい。口腔内は器具を使って診査し、粘膜には直接手指を触れないようにして診査する。口腔内に直接触れた場合は、必ず手指を消毒する必要がある。1日の被検者数にもよるが、何らかの方法でオートクレーブによる滅菌済の器具を被検者数揃えて検診するとよい。そのためには、近隣の学校と連絡をとり、数を揃えるか、センター方式を採用して、計画的に被検者の数だけ器具を借用することも行われている。また各自の学校で毎日少しずつ整備して1回に必要な人数分の器具を何年かけても整備していきたいものである。10本内外のミラーを消毒薬に浸け水洗いしてその場で再使用するといった方法は今日では行わない方がよい。消毒・滅菌の対象となる病原微生物は広範囲でその種類も多いが、感染力の強力なB型肝炎を基準として考えると、少なくとも煮沸消毒、出来ればオートクレーブに依る高圧滅菌を行うべきである。いずれの方法でも、健康診断の現場で行うことは困難なので器具の数は予め人数分揃えるのが望ましい。

まとめ:

  • 1)B型肝炎ウイルスを代表とする感染力の強力な病原微生物が蔓延しており、歯・口腔の健康診断に用いる器具等の消毒・滅菌は更に厳重に行う必要がある。
  • 2)器具はオートクレーブ等による滅菌法を採用するのが望ましい。このため検診器具の数を整え、検診当日の児童生徒人数分の器具を準備しておくべきである。
  • 3)口腔内には手指を挿入しないようにして、歯鏡等を操作して検診する。病的な皮膚や粘膜に触れた場合は、手指を十分に消毒する。

本会発行の「学校歯科医の活動指針」より(一部改変)

「CO(要精検)」の見解の整理について

平成22年3月24日 第12回理事会にて

平成18年度に本会から発行の「学校歯科医の活動指針<改訂版>」の中に「CO(要精検)」という見解が記載されました。
その経緯は、昨今のWHOの検診基準が世界的に変化してきたことに伴い、平成14年に「学校における歯科健康診断は主に視診で行う」こととし、「COは主に視診で「う窩」は認められないもの」と表記を変更しました。これによって特に隣接面で「う窩」は認められないが変色していたり、むし歯の可能性があると疑われる歯は、定義上は「CO」として取扱いますが、そのまま次回の歯科健康診断まで放置できないものについては「CO(要精検)」として、学校歯科医所見欄に記載し、「健康診断後のお知らせ」に明記して受診を勧める、としたことによるもので、COでも要精密検査の場合があることを明確にしたものです。
この考え方をうけて学校歯科医の活動指針改訂版では、『「CO要精検」(地域によっては補助記号"CO-S"を使用)と記入する。』(P.55の右段の上から3行目)と記載いたしました。
この表記について『う歯のスクリーニングはこれまで通り「健全・CO・C」の3段階であるにもかかわらず、CO-Sが設けられCOが細分化され、健康診断におけるう蝕の基準が4段階になったように誤解する学校歯科医の方が散見されます。 よって社団法人日本学校歯科医会は混乱を避けるために委員会および理事会でCOについて検討整理を行い、平成22年3月理事会で以下のことを確認致しました。

  • (1)平成14年2月に理事会決定し全国へ通知した「う歯(C)及び要観察歯(CO)の検出基準」(下記参照)を何ら変更したものではなく、これを遵守すること。
  • (2)う歯のスクリーニング診査の基準は従前どおり3段階(健全・CO・C)とする。ただし、特に隣接面などに視診で明らかな「う窩」が認められないが、そのまま放置できないと考えられる場合には事後措置としての対応として学校歯科医所見欄に部位名と「要精検」と記載すること。
  • (3)COでも要精検である旨を養護教諭に連絡し、連携のもと、「健康診断後のお知らせ」において児童生徒に「受診のお勧め」をすること。
『う歯(C)及び要観察歯(CO)の検出基準』
1. う歯(C)の検出基準
う歯(C):
  • 咬合面または頬面、舌面の小窩裂溝において、視診にて歯質にう蝕性病変と思われる実質欠損(う窩)が認められるもの。
  • 隣接面では、明らかな実質欠損(う窩)を認めた場合にう蝕とする。
  • 平滑面においては、白斑、褐色斑、変色着色などの所見があっても、歯質に実質欠損が認められない場合にはう蝕とはしない。

なお、診査の時点で明らかにう蝕と判定できない場合は、次に示す要観察歯とする。

2.要観察歯(CO)の検出基準
要観察歯(CO):

主として視診にてう窩は認められないが、う蝕の初期症状(病変)を疑わしめる所見を有するもの。
このような歯は経過観察を要するものとして、要観察歯(questionable caries under observation)とし、略記号のCO(シーオー)を用いる。
具体的には、次のものが該当する。

  • 小窩裂溝において、エナメル質の実質欠損が認められないが、褐色窩溝等が認められるもの。
  • 平滑面において、脱灰を疑わしめる白濁や褐色斑等が認められるが、エナメル質の実質欠損(う窩)の確認が明らかでないもの。
  • 精密検査を要するう蝕様病変のあるもの(特に隣接面)。

─── 平成14年2月20日 社団法人日本学校歯科医会理事会にて決定

▲ ページトップへ