歯・口の健康教室 お口が気になるすべての子供たちへ
おしえて!歯の健康診断って、なあに?
みなさんの学校でも、健康診断が毎年おこなわれていますね。 ピカピカの小学1年生にとっては初めてのことかもしれませんが、もう何度も経験している人もいることでしょう。
歯の健康診断では、学校に来る歯医者さん(学校歯科医といいます)が、お口の状態が健康かどうかを調べてくれます。
健康診断のとき、学校歯科医の先生が、数字の“0(ぜろ)、1(いち)、2(に)”や、そのあとに“CO(シーオー)”とか“GO(ジーオー)”とか、言っているのを聞いたことがありませんか?
学校歯科医の先生は、みなさんのあごの関節の状態や歯並びやかみ合わせがきちんとしているか、お口が清潔になっているか、歯肉は健康か、歯がむし歯になっていないかなどを調べて、
・健康な状態の場合は、0(ぜろ)と言います。
・少し心配なところがあるので、学校で学習したり、保健指導を受けながらしばらく様子を見ていく必要がある場合は、1(いち)と言います。
・かかりつけの歯医者さん(歯科医)にみてもらうほうがいい場合には、2(に)と言います。
このように、健康診断の結果、健康(0)や様子を見る(1)にふるい分けされた人も、定期的にかかりつけ歯科医や近所の歯科医にみてもらい、お口の健康維持のための観察や指導を受けることはとても大切な事です。
大切な歯を守るために
『やってみよう!「歯みがきのエチケット」』
ライオン株式会社、公益財団法人ライオン歯科衛生研究所が2021年に企画制作(著作)された動画(本会監修)が2022年5月にリニューアルされました。
手洗い・うがいに加え、毎日の歯みがきがいかに感染症予防の鍵となっているかをお伝えしてまいりましたが、本動画ではさらに「口閉じ歯みがき」についての説明も加わりました。
ぜひ、学校など集団で歯みがきをされる際にお役立てくださいますようお願いいたします。
公益財団法人ライオン歯科衛生研究所HP
では、“CO(シーオー)”とか“GO(ジーオー)”ってなんなの?どういう意味なの? 今回は、そんな疑問にも答えながら、“歯の健康診断”で、学校歯科医の先生がどんなところをチェックしているのか、順番に説明していきましょう。
顎関節(あごの関節)と
歯ならび・かみ合わせ
わたしたちが笑ったり、話したりするとき、自然とあごを動かしていますね。また、食事をするときも、あごを動かして、上下の歯で食べ物をかんでいます。あごの関節とお口の中のかみ合わせは、みなさんが健康に生きていくために、とても大切な働きをしているのです。健康診断では、小さなこどもの歯から大きなおとなの歯に上手にバトンタッチしているか、あごの関節やかみ合わせのバランスを調べます。
まずはじめに、みなさんの顔やあごの形をみながら、あごを上下左右に動かしてもらいます。これは、あごの関節がスムーズに動いているか、関節でカクカクと音がしたりしていないか、大きく口を開けたとき、下あごが右や左にズレていないかどうかなどをチェックしています。このとき、“0(ぜろ)”と言われたら、心配いりません。“1(いち)”と言われたら、注意信号です。“2(に)”と言われたら、歯医者さんにみてもらいましょう。
チェックポイント
- 顎関節(あごの関節)
-
0 異常なし
1 要観察
2 要精密検査
- 歯列咬合(歯ならび・かみ合わせ)
-
0 異常なし
1 要観察
2 要精密検査
また、お口の中を調べて、かみ合わせがきちんとしているかどうかを調べます。歯の方に問題がないか、上の歯と下の歯をかみ合わせたとき、前後や左右にずれてかみ合わせに問題がおきていないかなどをチェックします。歯の生え方や、あごの形が変形していないか、などもチェックしていきます。同じように“0(ぜろ)、1(いち)、2(に)”と言われます。
さまざまな咬合(かみ合わせ)
かみ合わせは、咀しゃく(食べ物をかみくだいて味わうこと)や発音に影響を与えます。 こんなかみ合わせの場合は、注意しましょう。
① 反対咬合(下顎前突)

下の前歯が上の前歯より前でかみ合っている状態。咀しゃくする機能が低下したり、あごの関節に違和感を感じる場合があります。
② 上顎前突

上の前歯が下の前歯に対して大きく前に出てかみ合っている状態。唇を閉じることが難しくなる場合があるため、前歯が乾燥して歯肉炎になりやすく、食べ物がかみ切りにくくなったり、発音に影響することがあります。
③ 開咬

上下の奥歯はしっかりかんでいるのに、前歯がかみ合わない状態。麺類などを前歯でかみ切ることができなかったり、発音に影響することがあります。 またこのようなかみ合わせを持つ人には、舌を前に突き出すような舌癖(舌が異常な動きをするくせ)もよく見られます。
④ 叢生

歯の並ぶすき間が不足しているため、歯が互いに重なりあっている状態。 歯と歯の間がむし歯になったり、歯肉炎になりやすくなるため、注意が必要です。
⑤ 正中離開

上の左右の前歯にすき間があるもの。発音にも影響します。
⑥ 過蓋咬合

かみ合わせが深いため、下の前歯が見えない状態。前後左右に下あごが動かしにくくなります。
⑦ 交叉咬合

かみあわせが左右どちらかにずれている状態。かみ合わせが不安定になります。
歯垢
つぎに、むし歯や歯肉の病気の原因になるプラーク(=歯垢)が残っていないか調べます。プラークとは、歯の表面についた汚れのことです。歯みがきをしていても、このプラークが残っている状態だと歯や歯肉を健康にできません。 いつもみがけている状態を保つようにしましょう。
チェックポイント
- プラークのつき方
-
0 きれい
1 すこしついている
2 たくさんついている
プラーク(歯垢)って、なあに?
プラーク(歯垢)は細菌のかたまりで、食べかすではありません。このプラークの中の細菌(ミュータンス菌やジンジバリス菌)がむし歯や歯肉炎の原因となります。
プラークは白色で、ネバネバして歯の表面に付いているので水に溶けません。だから、「ブクブク」うがいをしただけでは取れません。
これはプラークを顕微鏡で1,500倍に拡大したものです。丸い形や細長い形をした細菌が活発に動き回っているのがわかります。プラーク1mg(つまようじの先くらい)の中には約1~10億の細菌がいるため、歯ブラシでしっかりプラークを取り除かないと、このような細菌が歯肉の炎症をひき起こします。


プラークは歯とほとんど同じ白色をしているので、どこに付いているのかよく分かりません。「歯垢染色液」を利用して「赤染め」をすると、プラークが付いているところが分かります。
歯肉の状態
つづいて、歯肉の健康状態をチェックします。
“GO(ジーオー)”と言われたら、歯肉が病気になりかけています。規則正しい生活と歯みがきで健康な歯肉にもどしましょう。
“G(ジー)”と言われたら、歯肉が病気になっています。歯医者さんでみてもらいましょう。
チェックポイント
- 歯肉の状態
-
健康(けんこう)な歯肉(しにく)はひきしまっていて、ピンク色(いろ)をしている
歯肉(しにく)が赤(あか)い、腫(は)れる、血(ち)が出(で)ているときは、病気(びょうき)になりかけている
0 異常なし
1 要観察-GO
2 要精密検査-G
GO・Gって、なあに?
健康な歯肉

GO

歯肉の病気の原因となるプラーク(歯垢)は、むし歯菌(ミュータンス菌)が歯の表面に住んでいるのと違い、歯肉の近くや、歯と歯肉の間の溝(ポケット)に住みつく細菌のかたまりで、その中の歯周病菌(ジンジバリス菌)が主役です。ポケットの中では、500種類以上の細菌が集まって、ネバネバしたかたまりを作るため、簡単に取り除くことはできません。そのため、歯と歯肉の境目に歯ブラシをしっかり当てて、プラークのない状態を保つようにしましょう。
GO(ジーオー)とは: 歯石は付いていませんが、歯肉に軽い炎症があり、定期的な観察が必要で、適切な歯みがきで健康な歯肉にもどれる状態にある人のことをいいます。
G

G(ジー)とは: 歯科医院で精密な検査や治療が必要な歯肉の病気(歯肉炎)がある人をGといいます。歯肉の近くや、歯と歯肉の間の溝に付くプラーク(歯垢)とプラークが硬くなった歯石が原因です。プラークはブラッシングで取れますが、歯石はブラッシングだけでは取り除くことはできないので、歯科医院で取ってもらわなければ治りません。
歯肉炎の状態を放っておくと、この炎症が、歯肉の奥にある顎の骨や、歯の根の周囲にあり、歯のクッションの役目をしている歯根膜にまでおよんでしまいます。この状態を歯周炎、Pといい、歯肉炎と歯周炎を合わせて歯周病といいます。
歯の状態
最後に、1本1本の歯がどうなっているのかをチェックします。
このとき、学校歯科医の先生が、数字やアルファベットを言いますが、これらはみんな歯の名前で、 数字はおとなの歯(永久歯)のこと、アルファベットはこどもの歯(乳歯)のことなのです。
数字やアルファベットのあとに“CO(シーオー)”や“C(シー)”と言われたら、要注意です。“CO(シーオー)”と言われた場合は、むし歯のなりかけだから、がんばって歯みがきすれば大丈夫!でも、その歯みがきの仕方が大切で、ちゃんとみがけていなければ、そのままむし歯になってしまいます。正しい歯みがきの仕方を教えてもらい、しっかりみがくことが大切です。学校や歯医者さんのところで練習しましょう!
“C(シー)”と言われた場合は、 むし歯がみつかってしまいました。歯医者さんでみてもらわなくてはなりません。
チェックポイント
- 歯の状態 CO(シーオー)の例(れい)
-
歯(は)の溝(みぞ)が茶色(ちゃいろ)っぽくみえる
歯(は)の表面(ひょうめん)が白(しろ)く濁(にご)ってみえる
CO 要観察
C 要治療
CO・Cって、なあに?
歯科健康診断で学校歯科医の先生が、みなさんの口の中を見ながら「左下6番C」とか、「5番CO」と言っているのを聞いたことがあると思います。歯には番号がついていて、永久歯(大人の歯)は1~8番までの数字で表します。乳歯(子どもの歯)はA~Eまでのアルファベットで表しています。


CO(シーオー:要観察歯)とは、今は穴が開いたむし歯ではありませんが、歯みがきをおろそかにしたり、むし歯の原因となる甘い物を食べ続けているとむし歯になる可能性がある歯のことを言います。しかし、歯みがき(ブラッシング)をていねいにしたり、規則正しく食事をとるように気をつけて生活をしていると、むし歯にならないで、健康な歯にもどることもあるのです。ですから、学校やおうちや歯医者さんで正しいブラッシングの仕方を教えてもらったり、定期的にみてもらいましょう。


ブラッシングをていねいに行い、規則正しい食生活を送ると…


Cはむし歯になっている歯のことを言います。
まず、歯の表面にあるエナメル質の部分にくぼみができ、次に象牙質、歯髄(歯の神経や血管)へと進んでいきます。さらにむし歯が進行すると、穴が大きくなり、歯の根っこにまで細菌が入りこんでしまいます。

歯の質や形、細菌(歯垢)、糖質、時間の経過という4つの要素が合わさって初めてむし歯になります。

さて、これで歯の健康診断はおしまいです。診断の途中で、学校歯科医の先生が、注意や説明をしてくれるかもしれません。そんなときはしっかりと聞いて、わからなければ、質問してみましょう。
健康診断がおわると、みなさんのお口がどのような状態だったのか、健康診断の結果が知らされます。
健康診断結果のお知らせ例(PDF)健康だった人は、今までどおり、規則正しい食事と歯みがきをつづけましょう。
歯医者さんに行くことをすすめられた人は、できるだけ早く歯医者さんでみてもらいましょう。